現在はトラック搬入が主体となったが、
かつては岸壁に横付けされた船が、
まるで巨大な胃袋のように市場へ海の恵みを吐き出していた。
汐留から引き込まれた鮮魚列車のホームも、
まだ夜が明けきらぬ時間に、
鉄の車輪の音を響かせながら市場の裏手に滑り込んでいた。
夜中のうちに保冷車へ積み込まれた冷凍マグロは、
セリの時間に間に合うように一本ずつ下ろされ、
セリ場の床に整然と並べられる。
仲買人たちは懐中電灯で尾の断面を照らし、
脂の乗り具合を見極める。
その目は真剣で、声は短く、動きには迷いがない。
この空間には、
「魚を見ている」のではなく「値を見ている」
という緊張感が漂っていた。
午前5時30分、セリが始まる。
マイナス60度で凍りついた巨体から立ち昇る白い霧が、
セリ場を幻想的でありながら冷徹な空気で包み込む。
霧の向こうから聞こえてくるのは、
仲買人たちの短く鋭い掛け声、
セリ人の抑揚のある声、
そしてフォークリフトの警告音。
そのすべてが、
「命の値段」を決める音として響いていた。
セリが終わると、
フォークリフトが一斉に動き出す。
霧の中を縫うように走り、
セリ落とされたマグロを次々と運んでいく。
その様子は、
まるで市場という巨大な生き物の血流のようだった。

築地では尻尾に小さく切り返しを入れて身質を読むが、
三崎では尻尾を丸ごと切り落として検品する。
加工場向けのランク分けには三崎方式が向いている。
