市場の曲線に沿って並ぶトラックと、有楽町へ続く街並み。
私の朝は、東都水ビル6階の事務所から、この「巨大な生き物」の目覚めを見下ろすことから始まりました。
ここは、世界中の海から届く原料マグロの相場を動かす、戦いの最前線でした。
波除さんの斜向かい、海幸橋を渡ると築地場内。
橋の上には七味屋がぽつんと店を構え、隣には宝くじの売り場。
その向かいのビルには立体駐車場があり、私はそこに乗用車で通っていました。
始発電車ではセリに間に合わない。
だから車で来るしかなかった。
午前5時半のセリ開始に間に合わせるには、
市場の空気がまだ凍っている時間帯に、
この街に滑り込む必要があったのです。
海幸橋の欄干に手をかけながら、
場内の灯りがじわじわと点いていくのを見ていたこともあります。
七味屋の前を通ると、香りが鼻先をくすぐり、
宝くじ売り場のシャッターがまだ閉まっているのを横目に、
私は築地の“裏口”から市場の心臓部へと入っていく。
この街は、
眠っているようで、
実は誰よりも早く目を覚ましている。
そしてその目覚めに、
私は毎朝、立ち会っていたのです。
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…そしてその目覚めに、私は毎朝、立ち会っていたのです。
(写真:築地の朝、東都水ビルより)
