第一章:氷霧の中に響く「声」

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現在はトラック搬入が主体となったが、

かつては岸壁に横付けされた船が、

まるで巨大な胃袋のように市場へ海の恵みを吐き出していた。

汐留から引き込まれた鮮魚列車のホームも、

まだ夜が明けきらぬ時間に、

鉄の車輪の音を響かせながら市場の裏手に滑り込んでいた。

夜中のうちに保冷車へ積み込まれた冷凍マグロは、

セリの時間に間に合うように一本ずつ下ろされ、

セリ場の床に整然と並べられる。

仲買人たちは懐中電灯で尾の断面を照らし、

脂の乗り具合を見極める。

その目は真剣で、声は短く、動きには迷いがない。

この空間には、

「魚を見ている」のではなく「値を見ている」

という緊張感が漂っていた。

午前5時30分、セリが始まる。

マイナス60度で凍りついた巨体から立ち昇る白い霧が、

セリ場を幻想的でありながら冷徹な空気で包み込む。

霧の向こうから聞こえてくるのは、

仲買人たちの短く鋭い掛け声、

セリ人の抑揚のある声、

そしてフォークリフトの警告音。

そのすべてが、

「命の値段」を決める音として響いていた。

セリが終わると、

フォークリフトが一斉に動き出す。

霧の中を縫うように走り、

セリ落とされたマグロを次々と運んでいく。

その様子は、

まるで市場という巨大な生き物の血流のようだった。

<MEMO>

築地では尻尾に小さく切り返しを入れて身質を読むが、三崎では尻尾を丸ごと切り落として検品する。
加工場向けのランク分けには三崎方式が向いている。

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